オノマトペの無い世界線 〜そこにピカチュウは存在しない〜【書評?】&【雑記】
ピカチュウの魅力
24年前、突如として現れたキャラクターに、まだ幼かった私は1〜3歳児の義務教育「アンパンマン」をすっ飛ばして夢中になってしまった。
ちょっと太ったフォルム、ゲームとアニメの鳴き声のギャップ、伸びるほっぺ、当初のツンツンした態度、ケチャラー。
君の好きなとこ
好きなところを挙げだしたらキリがない。
ピカチュウやポケモンシリーズの好きなところを書いた原稿用紙で沖ノ鳥島を再現することも可能なくらいである。
両親は当時のことを振り返り、「あまりにもピカチュウはじめポケモンの名前や鳴き声を連呼するものだから、恐怖すら覚えた」と話す。
「シャイニング」のダニー坊やさながらの無表情で、
「レッドラム」の代わりに「シャーッボック!!」と連呼する子ども・・・
嫌過ぎる。
当時の父母には同情する。
しかしなぜ、平仮名すら知らない子どもが、151匹分のポケモンの名前を聞いただけで覚えられるほど夢中になったのか。
確実に言えるのは、ポケモンたちの名前、特に「ピカチュウ」という名前には、子どもたちが夢中になる魅力が秘められているということである。
言えるかな?ポケモンの名前(の由来)
先ほどあげた「シャーッボック!!」という鳴き声の持ち主、「アーボック」というポケモンはご存知だろうか。
アニメ版ポケットモンスターの宿敵、「ロケット団」ムサシの手持ちとして長く活躍した?紫の巨大な蛇の姿をしたポケモンである。
ムサシと別れて野生に帰る回「みだれひっかきでサヨウナラ!」は涙なしでは見られない。
その「アーボック」であるが、名前の由来は意外と知られていない。
その姿を模した蛇「cobra(コブラ)」の文字を逆に並べると・・・
「arboc」(アーボック)となる。
単純なのか、手がこんでいるのか分からないが、ストンと腑に落ちる由来である。
「ルギア」や「ゴチルゼル」や「バドレックス」も見習っていただきたい。
ピカチュウの名前を読み解く
そこをいくと、「ピカチュウ」も非常にわかりやすい。
「ピカピカ」
[副]断続的に強い光を放つさま。また、光り輝くさま。「星が
「チューチュー」
[副]
1 スズメやネズミの鳴き声を表す語。「ネズミが
※コトバンクより
という、2つの言葉、オノマトペと擬声語によって構成された名前であることは明白だ。
ピカチュウやオノマトペについて詳しく書かれた書籍が岩波化学ライブラリーにある。
今回の記事を書く上でもものすごく勉強になった。
大変面白いのでぜひ読んでくださいお願いします。
オノマトペの仕組み
上の本より抜粋した、オノマトペの仕組みについての表をご覧いただこう。
・・・この表、本当に面白い。オノマトペを見つけたらすぐに調べたくなる。
例えば、
「すくすく育つ」の「すくすく」なら、
第1子音が「す(s)」、第2子音が「く(k)」である。
よって、先ほどの表から考えると
「滑らかに・上下に動く」ことを表したオノマトペになっている。
するすると体が(上に)大きくなっていくことを表していることが分かる。
「ギザギザ」なら、
第1子音が「ギ(g)」、第2子音が「ザ(z)」。
硬い表面のものの摩擦、なんとなくイメージ通りな感じ。
では、話をポケモンに戻すと、
「ピカチュウ」の「ピカ」のもとになったであろう「ピカピカ」は
第1子音が「ピ(p)」、第2子音が「カ(k)」。
つまり、
(1)ピンと張りつめたもの
の
(2)動き
から、
光の明滅を表しているようだ。
ピカチュウvsミッキー
電球がピカピカ光る様子とネズミ。
ピカチュウを知らない日本人がいたとしても、なんとなくイメージが湧いてくるのではないだろうか。
「ピカチュウ」という名前は(たとえ子どもであっても)聞いただけで一瞬でイメージできるという利点がある。
想像を膨らませれば、「ピカピカ」から、電気を持っていることや体色が黄色であることを連想できる人もいるかもしれない。
反面、
「ミッキー」はどうだろう。
色も姿も、動物かすらも連想できない。
某ネズミのキャラクターか、カーチスか、ゴダイゴか、「ミッキー」と聞いただけではわからない。
※マウスの移動量を表す単位として「ミッキー」というものがあるが、これはむしろ「ミッキーマウス」からあやかった言葉である。ノーカン。
初見の分かりやすさでは、(日本のオノマトペに慣れている人では)ピカチュウに軍配が上がる。
オノマトペの優位性が、ピカチュウという名前には集約されているのだ。
オノマトペのない世界で
日本語には約4500語のオノマトペがあるといわれる。
さらに、漫画の普及によって、オノマトペはさらに生まれ続けているとも。
そんな日本が突如、オノマトペのない国になったら、、、?
「ピカピカ」も「チューチュー」も使えない。
そんな世界で、「ピカチュウ」 のように、特徴を一言で表せるような名前はあるだろうか。
ピカチュウは電気タイプだから、稲妻のイメージは悪くない。
また、ネズミである以上は、この特徴を外すことはできないだろう。
「稲妻」+「ネズミ」、、、
「イネズミ」しかないのではないか。
、、、うーん、これは人気はでないな。
電気ネズミというより、収穫前の稲を食い荒らす、「ヨクバリス」寄りのポケモンに感じる。
稲妻には、雷の伴う雨によって稲の生育にプラスだから「稲の妻」と呼ばれたという由来があるから、稲に全く関係がないとは言えないけども、、、
それにしたってマスコットを張れる名前ではない。
多分タイプは単ノーマルで、とくせい「にげあし」「ほおぶくろ」あたりだろうな、、、。
あってよかったオノマトペ
このように、オノマトペは短い言葉に多くの情報を内包する。
「ざらざら」というオノマトペは
「粗い粒状のものがこすれ合ったり続けて動いたりする音(のさま)」
という意味がある。
「テーブルがざらざらしている」
と
「テーブルが粗い粒状のものに覆われていて、それがこすれ合っている」
だったら、どちらがすんなり伝わりやすいかは言わずもがな。
短い・子どもでもイメージを持ちやすい。
何よりこの世にピカチュウを生み出してくれたオノマトペに、これからも感謝してポケモン厳選に励みたいと思う。